座談会

2017年の4月、総合情報学部社会情報学科は、規模を拡大し、経営学部経営学科に生まれ変わります。 もともと社会情報学科は、経営・経済コースや情報処理コースをもち、マーケティングやデータサイエンスに力を入れてきました。経営学部の母体となる教育研究環境はすでに整っているということであり、その関連のゼミを卒業した学生たちは、岡山理科大学なりの「経営」に関する経験を有しています。 そこで、社会情報学科を卒業したばかりの学生たちに、彼らの目線で経営学のおもしろさやキャンパスライフを語ってもらい、講義目標やカリキュラムとはまた異なった視点で「経営」をみていただければと思い、本座談会を企画しました。

出席者: 社会情報学科 16期卒業生

栗原 直哉出身:岡山県、岡山理科大学附属高等学校/山口ゼミ(経営戦略)/就職先:小売業

小槙 佑弥出身:岡山県、岡山県立笠岡高等学校/山口ゼミ(経営戦略)/就職先:陸運系

伊藤  綾出身:岡山県、岡山県立岡山朝日高等学校/大藪ゼミ(マーケティング)/就職先:商社系

藤原 幸樹出身:岡山県、岡山県立岡山大安寺高等学校/大藪ゼミ(マーケティング)/就職先:アパレル系

山口 真輝出身:岡山県、岡山県立総社南高等学校/大藪ゼミ(マーケティング)/就職先:金融系

小倉 麻衣出身:岡山県、岡山県立瀬戸高等学校/黒田ゼミ(データサイエンス)/就職先:食品系

石井 紳之出身:岡山県、ウィザスナビ高等学校/志野ゼミ(歴史学)/就職先:運輸系

聞き手

森 裕一総合情報学部社会情報学科(データサイエンス系)教授

みなさん、卒業、おめでとうございます。 今日は、卒業証書授与式の後、しかも謝恩会の直前というあわただしい中、集まっていただき、ありがとうございます。 さて、来年の4月開設予定の経営学部経営学科は、社会情報学科が母体となります。その新しい学びを支える3分野、「マーケティング」、「データサイエンス」、「制度・文化」を代表するゼミの出身者であるみなさんに、「経営」を目指す後輩たちのために、自分の経験を基にいろいろ語ってもらおうと思います。よろしくお願いします。

1 経営学やゼミを選んだ理由は?

それでは、まず、みなさんが卒業されたゼミや、「経営」という学問に興味をいだいた理由をお聞かせ願えますか。

山口
企業がどんな戦略を使って成功していくのか、たくさんのパターンがあるんですが、それらを見ていくのがおもしろいと思って、経営系のゼミ(大藪先生)を選びました。
栗原
入学前から、実家の自営業(コンビニエンスストアのフランチャイズ)を継ぐつもりだったので、自分が一番上になって店を切り盛りするにあたって、社会情報学科の経営で勉強することを選び、そして、ゼミも経営系のゼミ(山口先生)を選びました。
小倉
私の専門はデータサイエンスなんですが、統計学はいろんな数値を処理して、目に見える形にします。その手法をマーケティングに活かしていく、つまり、ここをこうするとこう動く、といったことを見ていくことに魅力を感じて、データサイエンスのゼミ(黒田先生)を選びました。
石井
私は歴史系のゼミ(志野先生)で、一見、経営と関係ないように見えますが、グローバル的な発想が必要ないまの時代だからこそ、歴史という観点が経営学に必要だと感じています。
伊藤
普通に生活していると、お店がどんなことをしているかなんて意識しないのですが、大藪先生の授業で、「あっ、そういうことをしていたんだ」と初めて知ったり、何となく感じていたことのからくりがわかったりして、「これだ!」と大藪ゼミに決めました。
藤原
きっかけはやはり授業でした。何よりもわかりやすかったので、興味がわき、とても内容が身近に感じられました。身近ということは、自分のためになるなと思い、大藪ゼミを選びました。
小槙
本屋さんには経営に関する実用書などがたくさんありますが、学問として、きちんと学ぶことで、実用書とは違う視点は自分のためになると思い、そして、将来起業する可能性もあることから、山口ゼミを選びました。

2 経営学のおもしろさって?

では、その経営や経営学のおもしろさって何でしょう。

栗原
たとえば、普通のお店で129円で売られているお茶が、スーパーでは50円で売られている。別の大きなお店は、逆に値段が上がっている・・・これはなぜか。などなど、身の回りの当たり前と思っているシステムも、実は裏に深い理由がある。その知識を通して、普段の生活を見直してみると、こんなにおもしろいことはありません。
伊藤
商品って、会社が作って世に放っているんだと、普通に思っていたんですが、大学に入って授業を受けると、実は、私たち消費者がそれに深くかかわっていることを知りました。新鮮な驚きです。しかも、かかわり方は一通りではなく、さまざま。私の卒論もそれがテーマでした。
小倉
私は元々理系で、数学がとても好きでした。当然、数字がいっぱい出てくるんですが、数字っていうのは、そこにある何かを示している固形のようなものと思っていました。しかし、経営に出てくる数字は、人の動きが見れたり、こうしたらこうなるというか、1つ2つ、いや5つぐらい先まで見えたりする動きのあるものであることがわかったんです。数字でいろんな動きが見えるところに、経営学のおもしろさがあると思います。
藤原
卒業研究をやり遂げてわかったことは、たとえば、同じ「もの」でも、ある人にとっては価値があり、別の人には全然価値がない・・・まったく正反対の考えになるわけで、一面だけでなく、いろんな面にスポットを当ててものごとを見なければいけないということが身をもってわかります。
石井
経営も何十年、何百年という時間の流れの中にあるわけですから、日々の変化や時系列のデータが蓄積されていきます。そこに、経営学も歴史という観点から見る必要性が出てくると思います。この企業にはどういう歴史があるのか、経営にどういう歴史があるのか、ということを自然に考えることになるんですね。

3 4年間のキャンパスライフは?

さて、今日卒業されたところですが、4年間のキャンパスライフを振り返って、何が印象に残っていますか?

栗原
サークル活動が楽しかったです。私は岡山の4つの大学が集うアウトドアサークルだったんですが、1つの大学の中におさまらず、大学生というつながりで、いろんな大学の人と交流をもてたことがためにもなりましたし、一番楽しかったです。
山口
私は、ゼミで、街づくりの「アイデアコンテスト」に参加したことが思い出ですね。
伊藤
あ~。やったよなぁ。しんどかったよね。
藤原
卒論よりしんどかったです。いかに限られた時間で、最大の力を発揮するかということが、この街づくりコンテストで学びました。大藪ゼミとしては、3年間、毎年挑戦しまし、2年目、つまり1つ上の先輩たちは賞をもらいました※1。私たちは賞をもらえませんせしたが、受賞より、その経験が捨てがたいですね。 ※1「岡山まちの夢☆学生アイデアコンテスト」参加の様子
栗原
うちのゼミは、福島の復興プロジェクトにかかわりました。現地の高校生や大学生に岡山に来てもらって、どう福島を復興させればよいかを一緒に考えていくというものでした。漠然と東北は大変だ、ということはわかっていても、実際にどうであるかというのは、現地の人たちに実際の話を聞き、一緒に考えていかないとダメであることがよくわかりました。結果、私たちが導き出した取り組みは、福島の特産品を岡山駅前の広場や大学祭で販売するというものでした。ちょっと注目を集めました。
小槙
福島復興プロジェクトは、実際にものを売り、福島の人と交流することで、より自分自身の問題として身近に感じることになり、大学生らしいイベントであったと思います。
栗原
こういったことが、将来の自分たちの経営のノウハウに活かされたり、会社で何か企画するときに役立っていくんだろうな、と実感した次第です。

たくさん経験したと思っていたことも、今から思えば、その3倍も4倍ものことができたと思いませんか?

【全員】
あー、思います、思います! 大学生活、もっといろんなことができたと思います。後輩のみなさんも時間はたくさんあるので、有効に使って、いろんなことに挑戦してほしいと思います。
(もっと旅行したかったぁ~)。
(時間がないと思っていたけど,資格も、2つ3つは取れたよなぁ~)。

4 これからの進路に活かせる大学時代の学びや経験って?

次に、みなさんのこれからの進路に活かせるだろう、あるいは役立てたいと思っている大学時代の学びや経験って、どんなことか教えてくれますか?

栗原
僕の場合は進路が決まっていたので、それについての卒論を書くことが、そのまま将来に直結していました。
小倉
叱られ慣れたことです。大学ではなくで、アルバイト先でのことです。私は、毎日のように叱られていたのですが、叱られたという記憶だけを残すのではなく、何で叱られたのか、叱られたことをどう改善していくのかをちゃんと考えるようになった気がします。高校時代では「はい、すみません」で終わっていたことが、次はこうしなきゃとか、こうしないようにしなきゃと思うことができるようになりました。私は、営業・技術系に就くので、ミスはあったとしても、それを繰り返さないこと、ミスを犯したときにどう対処するかを学んだのは、よかったと思います。大人の人との付き合い方っていうか、大学生に与えられる自由な時間の中で、触れることのできた「社会」、そこから学んだことが、叱られ慣れること、だったと思います。
伊藤
卒論を完成させることは、大学生でしかできないことですよね。でも、この1つのことをやり遂げるってことは、すごく大変なことで、その1つのことを達成できたという経験は、これから社会に出て、いろんな壁にぶつかっても粘り強くやり通せる基礎になるのかな、と思います。
石井
僕は、ちょっと事情があって、1回留年してるんですが、そんなとき、周りのせいにしたり、投げやりな気持ちも出てくると思うんです。が、そこを抑えて、自分の責任としてとらえ、どう失敗を乗り越えていくか、あるいは、どう自分の能力が発揮できるかを考え、もし、できないときは、いろんな人に聞いていくなど、愚直に前に前に、っていうのが大事なんだということを学びました。

5 経営学部に発展することへの期待は?

現在(2015年度)の社会情報学科の教員11名は全員経営学部に移り、専門分野を補強する先生が8名、新たに着任します。8名の内訳は、経営関係が5名、データサイエンス系が1名、制度と文化系が2名です。この経営学部、みなさんの経験から想像して、どういったことが期待されますか?

小倉
専門の先生が増えることによって、勉強の質が高まるんですよね。これは、うらやましいです。社会情報学科もたくさんの経営関係の科目が学べたのですが、「広く、浅く」という感じから、「1つ1つ深く」へ変化するわけですから、これは、より本物の経営が勉強できるということで、期待が膨らみます。
伊藤
普通、新しい学部というのは、何もかもゼロからのスタートとなりますが、今度の経営学部は、社会情報学科がベースになっています。「社情(しゃじょう)」という土台があり、そして、先輩がいるので、ゼロから作るという苦労は不要だと思います。それでいて、新しいことが何でもできる・・・最高の環境だと思います。先生もそうですが、先輩たちもやさしいですよ!
藤原
話に聞いた「イノベーション・ラボ」、企業の方と一緒になって、企業の人がかかえる実際の問題を学生たちが解決していくというのは、魅力的だと思います。先の街づくりコンテストや福島復興プロジェクトのようなことが授業で行えるんですよね。先輩たちが、課外でランチパックの商品企画をした※2のも知っていますが、そういった経験ができるのは、即戦力というより、経営に必要な深い思考が培われるようで、1つといわず、たくさんの経験を積んでほしいです。※2「ヤマザキランチパック理大バージョン」開発プロジェクト
栗原
学舎がきれいになるのは、ちょっと嫉妬です!!
山口
そう、そう。全部、新しい学舎に移るんですよね。うらやましいです。

6 経営学部を目指す後輩へ一言

最後に、経営学部を目指す後輩に向けて一言ずつお願いします。

栗原
最初は、分野をあまり絞り込まなくても、次第にやりたい分野に近づいていきます。具体的な目標がまだないといった場合でも、とにかく飛び込んでいろいろやっていくと、成功につながりますよ。
小倉
大学生は、社会人として一歩踏み出したところであることを自覚してほしいと思います。自立心をもって大学生活を送ってください。
山口
情報収集は大切です。たとえば、大学選び。いろんな専門分野や教育環境をしっかり調べて、決めてほしいと思います。そして、大学生になったなら、就活(就職活動)。たくさんの企業に触れ、いろんな業種や職種を知ることが重要だと思います。
伊藤
最初と最後は変わってもいいので、4年間を通して、自分がどうあって最後はどうなるかという目標を決めて、大学生活を過ごしてほしいと思います。ダラダラ過ごさないってことですね。一度しかない、最後の学生期間ですから。
石井
大学生というのは勉強が第一。そして、何を学ぶかより、何を得るかを目標にした方が、今後の自己成長につながっていくと思います。それと、新しい経営学部ですから、しっかり歴史を作っていってほしいと思います。
藤原
一言で言うなら、食わず嫌いはよくない、ということです。何にしても「触れてみる」ということがすべてのスタートだと思います。そこで、おもしろいこと、興味あるもの、ひっかかるものがあれば、そこをつきつめていくことです。特に、新学部の1期生は何でもできると思います。好きなことをいっぱいやって、よい学科を作ってください。
小槙
大学生活4年間は長いようで短いので、何か自分の目標でも答えでも1つ見つけることができれば、それが大学生活にとって重要なことになると思います。また、それを見つけるために大学に行くということで、がんばってほしいと思います。新しい学部なら、目標も定めやすいと思います。みなさんの活躍に期待しています。

後輩のみなさんがよりよい進路を選択できるように、また、経営学の本質やキャンパスライフなど、岡山理科大学生の目線でのイメージが伝わったであろうことを期待して、本座談会を終えたいと思います。卒業生のみなさんもそれぞれの職場で大いに活躍されることを祈っています。
ありがとうございました。

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